大学生が読んでみたら面白そうな本を紹介するブログ

「読書はきっと人間力を向上させる」と自己暗示を掛けながら読書に励む大学生が、読了書を書評を模して紹介します。

『心と脳―認知科学入門』安西祐一郎著 岩波新書

 

 この本を読もうと思ったきっかけは、大学のメディア論の授業。メディア論の教科書の中で脳の構造についての記述があり、「脳について勉強したら色々応用が効くのではないか」と淡い期待を込めて購入し、読み始めた。

 

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 メディア論の授業で触れた脳の分析では、左脳と右脳の機能が大まかに区分されており、現代は右脳的な時代なのではないか、との考察が成されていた。しかし、その点については、「右脳左脳は構造が異なり機能にも違いがあるが、それぞれ一方が傷ついた際には機能を補完するように働くこともある。そのため左右半球の違いにこだわる研究者は少ない」と述べられていた。

 

 

 当書は、ともかくも、認知科学の「入門書」である。内容はこれまで認知科学が歩んできた系譜に沿って構成されており、これから認知科学に取り組もうとする人には、力強い支えになるであろうと思われる。しかし、「ちょっと脳科学に興味がある大学生」にはいささか難解である点のほうが多いように思われた。何より、専門用語や人名が多く、内容がスッと噛み砕けない。

 

 だが、それでも実になる点は幾つもあったので数点挙げる。

 まず、「認知科学」という分野そのものについて。認知科学は、近年大きく成長した分野であるということを当書を通して学んだ。そもそも認知科学=脳科学ではなく、脳科学に情報科学の方法論が合流したものが認知科学であるという点が一つ。すなわち、認知科学は、近年の情報技術の発達によって、より大きな発展を遂げたのである。

 そして、心と脳は別ものであるという考えが主流であるという点を改めて確認できたのも大きな収穫である。即ち、心(感情)が思考(脳)を制御したりと、これら二つは別々のものとして相互に影響をし合っているというのである。また、この「心と脳」に関する研究は、まだまだ発展途上であり正確なところは分かっていない、むしろ、「脳の研究がいくら進んだとしても、心のはたらきを十分に説明することは困難である」と著者は述べている。

 

ともかくも、脳科学に少しでも興味があるならば、読んでみるのもありかもしれない。が、先述したように難解な部分が多いため、興味がある部分だけ掻い摘んで読むのが良いかとは思う。